LINE初の連載小説「世界から猫が消えたなら」、皆さんは10/8(月)に第1話を配信した第1話をお読みいただけたでしょうか?新スタイルの小説配信に注目が集まる中、今週末にはいよいよ第2話も配信予定です。

そんな期待のLINE連載小説の著者・川村元気さんが、LINEスタッフによる独占インタビューに答えてくださいました!

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10/8に第1話が配信されましたが、読者の反応はいかがですか?
 
 この作品のアカウントを開設した当初は、友だち登録が300人ほどだったのに、今や11万人以上が登録してくれていて、本当にびっくりしています。最初は、「LINEで小説って、どうなの?」という疑問の声もあったと思うのですが、第1話の配信までにこんなに多くの方が登録をしてくれたということは、皆さんの期待やニーズがあったのかなと思います。

第1回の配信後、「従来の本で読む小説とは違って、まるで、みんなで同じ時間に同じ作品を一緒に読んでいるような感覚で、いままでにない不思議な読書体験だった」という声もいただきました。「スマートフォンで小説を読む」という新しい読書体験の可能性の一歩を探れたような気がしています。


確かに、次の配信を期待する声はこちらにも届いています。では、そもそも、なぜ、LINEで小説を配信しようと思ったのですか?
 
 この物語には、家族や恋人、友人や同僚など、人との「つながり」や「絆」について思いを巡らせるシーンが多く登場します。LINEは、すでに日本人の3,500万人が使っていて、日常のコミュニケーション手段として溶け込んでいますよね。「つながり」や「絆」について、リアルに、そして、身近に、イメージを膨らませてくれるメディアとして、すごく相性がいいと思ったんです。そして、日常でいちばん多く触れている「携帯電話」の、その延長線上を辿っているうちに、「いつのまにかまったく別の世界にいた」という感覚になるといいな、と。

 いっぽうで映画プロデューサーとしては様々な作品に携わってきましたが、作家としては全くの新人です。
その新人の作品を広く読んでもらえるために、本というメディアだけではない場所で、まず、その世界に触れてみて欲しい、という気持ちもありました。


 「日常に溶け込んでいる」とのことですが、川村さんご自身も、普段からLINEをお使いだったのですか?
はい、日常的に使ってましたよ。実は、最近までモロッコで一人旅をしていたのですが、モロッコからも日本にいる編集者とLINEの無料通話機能でやりとりをしていました。現地で知り合った人にも教えたら、とても喜んで使っていました。
 
 そんな、当たり前のように使っているLINEも、使えなくなったときにはじめて、その「ありがたみ」が分かると思うんです。もう、お箸とかスプーンとかと一緒ですよ。そんなことを想像しながら読んでもらえるといいですね。


無くなったときにはじめて分かる「ありがたみ」・・・ありますよね・・・恋人とか・・・。ところで、今回、このようなストーリーの作品を書こうと思った経緯は何ですか?

 主に2つあります。まず、2010年に公開された映画『悪人』を製作したときに、原作者である作家の吉田修一さんに「脚本家」として関わって頂いたんです。その時に、「映画だからできること」と「小説だからできること」の違いを強く意識させられました。普段映画を製作している僕が、本を書くのなら、「本にしかできないこと」をしてみたい、と思いました。

 たとえば、「世界から猫が消える」という表現は、文章にしたら一行で済みます。それは、読者がその世界を想像し、補完してくれるからです。でも、この一行を映像にしようと思ったら、どんなにシーンを重ねても、表現するのはかなり難しいんです。

 日頃から、「映画でできること」と「本でできることは」なにか、そんなふうに考えていたある日、携帯電話を落としまして、1日中携帯電話を持たない生活を送ることになったんです。そうすると、友だちの電話番号はおろか、親の電話番号すら覚えていないことに気づいて驚いたんですね。そのあと電車に乗ったら、同じ空間にいる僕以外の人たちほとんどが携帯電話を見ていたんです。そのとき、自分だけが特別な景色を見ているんじゃないか、という感覚をおぼえたんです。人は何かを失うと同時に、何かを得ている。そして、何かを得るときには、何かを失っている。このことを、書いてみたい、と思いました。

 この話は携帯電話に限らず、あらゆるものに当てはまります。たとえば、極端な話、自分が世界から消えてしまったら、世界はどう変わるんだろう。自分が死んだ世界と、自分が存在している世界、その差異はなんだろう。自分の葬式で、心から悲しんでくれる人はどれくらいいるんだろうか…。

 どういう生き方をするかって、つまりは、どういう死に方をするのか、と同じだと思うんです。だから、死を迎えるときのことを想像することで、生き方を見つめなおすことにもなると思いました。


なるほど、そういう想いと体験があって、この作品ができたんですね。では、そんな作品を特にどんな方たちに読んでもらいたいですか?

 もちろん、できるだけ多くの方に読んでもらいたいですが、やはり、LINEユーザーの中でも多い10~20代の人たちには是非読んでみて欲しいですね。さっきお話したような、自分が死ぬ時を考えて生きるということは、まだあまり意識していないと思うんですけど、早めに意識をしておくと、きっといいことがあると思います。それに、特に若い人たちにとって馴染みのあるLINEを通して、この作品が初めての小説体験になったという方も出てきてくれたら嬉しいですね。読み物の良いところって、自分の価値観が変わる可能性があるところだと思うんです。LINEという閉じられた空間の中で、自分だけでこっそりこの作品を読んで、価値観が変わるような体験をしてみて欲しいですね。
 あとは、僕と同じような30代やそれ以上の方にも、人生の後半戦を迎えるにあたって、どうやって死にむかって生きていくか、を考えるキッカケにもあるのでぜひ読んでみて欲しいですね。


では最後に、読者の皆さんにむけてメッセージをお願いします。

 僕が映画を製作する際に心がけていることは、最後に向けてどんどん引きこまれていく作品にすることで、この物語もそれを意識しています。LINEで連載する最終章の「土曜日」まで読んでいただいた方にしか見ることのできない景色をお見せできると思うので、ぜひ、次回、携帯電話が消えてしまう世界を描いた第2話やそれ以降の配信も楽しみにしていてください。


川村元気さん、ありがとうございました!


柔らかい物腰だけれどずっしりとしたような熱い想いを感じることができたインタビューでした。
ストーリーでは、どんどん世界からモノが無くなっていきますが、そのたびに皆さんの中ではどんな大事なモノが見えてくるでしょうか?10/14(日)配信予定の第2話もお楽しみに!


 川村元気さんプロフィール
1979年生まれ。映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia 2010」に選出され、翌2011年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。そのほかにもルイ・ヴィトン・プレゼンツのCGムービー「LOUIS VUITTON -BEYOND-」のクリエイティブ・ディレクターなどもつとめる。
現在Casa BRUTUS誌にて「Tinny ふうせんいぬティニー」を連載中。本書が初の著作。
■本の情報はこちら
『世界から猫が消えたなら』マガジンハウスより10月25日発売 http://magazineworld.jp/books/all/?gosu=2502